理事長 山崎 修道
 エイズワクチン開発協会(AVDA)は、2004年2月に東京都よりNPO(特定非営利活動法人)の認証を受けました。本協会の目的は、現在世界で年間500万人もの新しい感染者を生み続けるエイズの拡大を防ぐために、日本発のエイズ予防ワクチンの開発を促進し、その生産と普及を計ることにあります。そのためには、予防ワクチンの果たしうる科学的、経済的、人道的役割について正しいビジョンをもち、有望なワクチン候補をターゲットにして一日も早く臨床試験に移行させる献身的、且つ効率的な努力が必要です。

 現在日本には動物実験によって安全性と有効性が証明されたいくつかのエイズワクチン候補があります。このうちAVDAが最初に対象とするワクチンは、過去10数年かけて国立感染症研究所のエイズ研究センターが中心になって開発してきたワクチンで、安全性の高い2種類のベクター(BCGと弱毒ワクシニアウイルス)にHIVの遺伝子の一部を挿入した遺伝子組み換え生ワクチンです。後で述べるように、この二つのワクチンを組み合わせて投与する方法は優れた感染防御免疫を誘導することがサルを用いた実験で示されています。しかしながらヒトにおけるエイズ予防効果を実証するためには、ひとりワクチン開発に携わる研究者の努力だけでは不可能であり、一般社会、民間企業および国の強力な支援を受けてその計画を着実に実行に移す推進母体が必要であることは明白であります。AVDAはこのような認識のもと、エイズ予防ワクチンの実現という極めて困難な事業に挑戦しようと集まった多分野の有志によって結成された組織であり、100%エイズワクチン開発推進を目指して活動する日本で唯一のNPOです。 このようなAVDAの使命とその活動に対する皆様のご理解とご支援を心からお願い申し上げます。

* * * * * * * * * *

 AVDAの当面の課題は、上記の候補ワクチンをいかに早く臨床試験にもってゆくかということです。このエイズ予防ワクチンは、高い安全性と有効性が期待され、また生産価格も比較的安いという利点のある画期的なものです。 このワクチンには次のような特長があります。

1. 現在広く使われている生ワクチン(BCG)とヒトの体内では増殖しない高度弱毒化ワクシニアウイルスとをベクターとして利用しているので安全性が高い。
2. サルを含む動物実験によって、ワクチンの安全性と有効性(細胞免疫の誘導と感染防御力)が証明されている。 
3. 将来は開発途上国での技術移転と製造を視野に入れており、日本で作るよりも安価に生産でき、普及がはかれる。
4. 現在の対象ワクチンは日本や東南アジアなどで流行しているSubtype EのHIVに対応するワクチンであるが、同じベクターを用いて他のSubtypeのHIV遺伝子と入れ換えることによって、アフリカ、インド、中国などで蔓延しているエイズにも対応出することは技術的に可能である。 

 さらに日本発のこのエイズ予防ワクチンは、国立感染症研究所における基礎研究の成果に基づいて試作され、日本国際事業団(JICA)やエイズ予防財団(JFAP)などの支援を得てタイの国立研究所(NIH)に技術移転され、1998-2003年の5年間に日本科学技術振興財団(JST)とタイ保健省医科学局(DMSc)の共同研究プロジェクトによって完成されたものです。 このためタイ自身が、日本と一緒に開発したワクチンであるという誇りをもち、国策として積極的にタイ国内での臨床試験の実施を望んでいます。

 しかしながら新しいワクチンの製造と臨床試験にはさらに大きな資金が必要です。しかもエイズワクチンは主としてエイズ流行国である開発途上国で使われるため、たとえ成功しても金儲けにつながることはほとんど考えられません。 経済大国日本の企業が真剣に取り組もうとしない大きな理由の一つがここにあることは十分理解できます。この問題を打開して前進するためには、米国のように政府がエイズワクチン開発のために巨額の補助金を出すか、あるいは民間団体や個人からの寄付金に期待する他ありません。

 今こそ日本が世界のエイズ対策に貢献できる新しいチャンスが見えてきたのです。 日本発の初めてのエイズ予防ワクチンがその効果を試されることなく、実験室の片隅で朽ち果てることのないよう、重ねて皆様のご支援をお願い致します。

関連記事紹介「エイズワクチン開発の進むべき方向」松尾和浩,(IASR 病原微生物検出情報, Vol.26 No.5(No.303) May 2005)